忍者ブログ
| Admin | Write | Comment |
オリジナル長編(?)小説を展開しています。
2025/01. 10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31 
[9]  [10]  [11]  [12]  [13]  [14]  [15]  [16]  [17]  [28]  [29
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

どうしても、気になる事がひとつある。
今日の空猫高校内部生徒会室では、1人の男が奥に据えられた大きな机の椅子に腰掛け、大きく息を吐き出した。
男の名前は、空猫校生徒会長玉兎真。

12 高まる立ちと副会長の
 
最近てんやわんやで、聞けずじまいだった事。
――僕、千鳥とキスしたから。
いつか、不良校と名高い征鳥高校の烏羽真紅と駅前のファーストフード店“ざ・どなるど”で会った事がある。その時、真紅が言った言葉。それが事の発端である。
「・・・んな訳ねーだろ」
ぽつりと呟かれた言葉は、誰にも届く筈無く。
夕日の元、部活に勤しむ者たち。それを何気なく眺めながら、真は剣道大会の知らせを思い出していた。剣道部は主に週末を中心に活動している。ある土曜日の午後、息を切らした剣道部マネージャーの千鳥が真っ赤な顔で道場代わりに使用している体育館に駆け込み、剣道大会に出場する正選手を決めるといった旨を話した。それに選ばれたのが、部長の真や竜也を始めとする精鋭だった。
そういえば、と壁に掛けられたシンプルなカレンダーを見る。1週間後の土曜日には、大きな赤丸で印が付けられていた。
来週が、大会1日目だった。
 
「真さん、稽古頑張ってくださいね」
ぽんと肩に手が置かれる。しかし、千鳥は真と頭1個ほど背が違うため、千鳥は爪先立ちをしていた。大きな灰青の目が、こちらを見る。
「お・・・おう。・・・・・・あのな、千鳥・・・」
千鳥は首を傾げて真の方を見上げた。真の背に冷や汗が流れる。言える訳が無い。お前は真紅と本当にキスしたのか、なんて。
「真さん?」
「あ、いや・・・俺は勝つから、・・・絶対に板ミルクチョコレート用意しろよ!」
「了解してますよ。本当に真さんはミルクチョコが好きだなあ」
くすくすと千鳥は笑った。真の頬に赤みが増す。こんな事、言うつもりじゃなかったのに。
「ちくしょー・・・ったく、疎いんだよてめーは」
千鳥が他の部員たちの元へ行ってしまうと、真は手で目を覆った。
「俺は・・・てめーが好きなんだよ・・・・・・」
「聞き捨てならねぇ台詞だな」
後ろから聞こえた声に、真は飛び上がる。振り向くと、仁王立ちで腕を組んだ竜也がいた。
「部長~、大会迫ってるのに不謹慎じゃないっスか?」
「や・・・ちが・・・・・・!」
「絶対妨害してやる」
竜也は眉をきゅっと詰めて、辛そうな顔になった。
「俺だって千鳥が大好きだ。あんたと千鳥の噛ませ犬役は嫌だ。大体、千鳥の気持ちも解らねえ野郎に渡せる訳がねえ」
「待て、千鳥の気持ちって・・・?」
竜也は歩み去ろうとした足を止めて真を肩越しに見る。
「ほんっとに鈍いんだなー、部長ってば。自分で考えて下さいよ」
竜也が消えて、真1人が残された。
 
「あ、終わりましたか、真さん?」
ぱっと千鳥が振り返った。
夕焼けの体育館裏。隣を通る人通りの少ない小さな道と接している。生徒たちの間では告白スポットと人気が高い場所だ。真は眉を顰めた。
「やあ、孝鳥。練習に余念が無い様だね」
千鳥の正面にいる、にっこりと、しかしどこか皮肉に笑う少年。烏羽真紅である。
「何でてめーがここにいるんだ」
「ここは僕の散歩道だよ。偶然千鳥に会ったから話していただけ」
フェンスの向こうで、真紅は小さく息を吐いた。
「全く、嫉妬深いね孝鳥は。ここにいる僕じゃ千鳥に触れられる訳無いだろう?」
分かっていても、腹が立った。目の前にいる千鳥と真紅は、千鳥が真に気付くまで、まるで恋人の様に話をしていた。真にとっては面白くない。
「他校生はうちの生徒に関わるな。それと、不順異性交遊」
千鳥は驚いた様に眼を見開いて真を見つめ、反対に真紅は漆黒の瞳をきゅっと細めた。
「・・・規則違反だ、千鳥。早くそいつから離れろ」
「ま、真さん? どうしたんですか、一体・・・・・・」
「早く離れろ!」
大会が迫っていて、苛立っていたのかもしれない。千鳥はびくっと固まり、真紅の目は憎しみを訴えていた。真は乱暴に千鳥の肩を抱き寄せて真紅を睨みつける。
「まこ――」
「ふざけんじゃねえ! てめーが・・・こいつにキスしたんなら、今ここで証明してみろ!」
した筈が無い。千鳥は首を振って拒否する。何を言っているんですか、真さん、真紅さん?
あたしは誰ともそんな事していない。それを望んでいたのに。
「何で・・・知っているんですか・・・?」
驚きと恐怖に満ちた目。止めようとした真の腕をすり抜け、千鳥は走って行った。
「君、そこにいなよ。僕が今すぐそこに行くから」
憎悪が込められた表情で真紅は言い放つと、学校の裏門へ向かって全速力で走り出した。
真は呆然とそこに立っていた。ただ、記憶の中に残るのは、自分の腕をすり抜けて行った千鳥の涙だった。
 
真さんは、知っていたんだ。
校舎の壁に背をつけて、必死に嗚咽を噛み殺した。長い道程を走ってきたせいで息が荒い。
真さんに嫌われる。やな女の子だって、思われる。そう考えただけでやりきれなかった。
「真さぁん・・・」
つい、情けない声が漏れた。その時、向こうから足音が聞こえて、千鳥は慌てて目元を拭う。それなのに涙は後から後からぼろぼろと零れてきて、止まらなかった。
「千鳥・・・?」
聞き慣れた声がしたかと思うと、足音が早くなった。そして、がくんと肩を揺すられる。
「千鳥! どうした!? おいっ、千鳥!」
「・・・・・・りゅー・・・?」
竜也は、血が出る程強く唇を噛み締めた。
 
「いい加減にしろ、孝鳥。僕をこれ以上怒らせると君の命は無いよ。あの時みたいに、庇ってくれる人もいない君は全くと言って良い程非力だ」
真紅の口調には激しい怒りが込められていた。しかし、真は竹刀を抜く。
「五月蝿い。元はと言えば、てめーが悪いんだ。てめーさえ、千鳥に近づかなければ・・・!」
真紅の顔が驚きの表情を一瞬見せ、次の瞬間今までより怒りに満ちた顔になった。
「・・・君、それ本気で言っているの?」
涙が込み上げてきた眼を擦り、真は竹刀を構える。
「俺から決闘を申し込む。今度こそ、命の取り合いだ」
真紅も、腰に吊った木刀を抜く。漆黒の瞳がきらりと輝いた。
「矢張り君は、滅ぶべきだ。ずっとそう思っていた」
「・・・だろーな・・・」
自らに嘲笑が零れた。最近の自分がおかしい事は分かっていた。今し方言った言葉は全て酷いものだとも知っていた。全く愚かだ。真は出来るだけ、優しく笑った。本当にそう笑えたかは知らない。それでも。
「千鳥・・・・・・」
お前の幸せの中に、自分は構成されていたのだろうか。
 
* 最終回近い臭い! でもね、終わらない。
PR
この記事へコメント
NAME
TITLE
MAIL
URL
COMMENT
COLOR
PASS   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
  • カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
  • メールフォーム
意見・質問・苦情。 何でも受け付けております。
Powered by SHINOBI.JP
  • 最新CM
[09/18 香鈴]
[08/14 太陽]
  • プロフィール
HN:
うぐいす
年齢:
32
性別:
女性
誕生日:
1992/08/08
職業:
ノートにガリガリすること
趣味:
小説を書くこと
自己紹介:
小説に特化したブログを作ってみました。
  • ブログ内検索
Copyright © 鷹の止まり木 All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics  Template by Kaie
忍者ブログ [PR]