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オリジナル長編(?)小説を展開しています。
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「じゃあ、行こうか千鳥」
「えっ?」
少年、真紅は優しく微笑み、地面に音も無く着地すると、千鳥の腰に手を回した。
「おい、おいおいおいおいおいっ! 待て!」
「待たないよ。それじゃあ決闘、頑張って?」
慌てる真にそう言い残すと、真紅は千鳥諸共闇に消えた。

7 男はやっぱりでした
 
「抜かった・・・今目の前にいる謎の男、保(本人は詫喪都だと主張しているが俺たちはそれを無視する事にした)と長年の因縁に終止符を打つためにわざわざ隣町の白秋町の私立征鳥高校まで来た正義の空猫町立空猫高校生徒会(表は普通の生徒会だが夜は街に蔓延る不良をめったんめったんに退治する「月猫」という裏の顔を持つぞ!)生徒会長玉兎真(別名孝鳥の真)の元へ何故か副会長の結城千鳥(長い黒髪に灰青の瞳がかわいい女子だ!)が現れ、しかもその千鳥がこの学校随一の不良烏羽真紅(静かなる鬼の異名を持つ。どうやら千鳥に惚れているらしい)に連れ去られてしまうとは・・・!」
「長いあらすじ、ご苦労さん」
労う保。
「・・・保、向こうも気になるが、今はこれをやるべきだと俺は思う」
真はふっと笑った。
「俺が小学生だった時か・・・。良き友人だったお前は、今までとは一変して辛い物好きを主張し始めた」
意味不明だが、付き合ってあげて頂きたい。保は厳かに頷く。
「そうだ。辛いものと甘いものは決して相容れない・・・しかも、俺はカンボジアへと旅立たねばならなかった」
「“いつか、また会うかもな? 同胞”・・・そう言って、お前は地球を去った・・・」
カンボジアは地球にあるよ。
「今思えば、よく俺、同胞なんて言葉知ってたな・・・小5で」
遠い目をする保。
「以上だ。これが俺たちの因縁・・・永遠のサイクリングだ」
終了。
 
一方、駅前のお洒落な喫茶店。
そこにいる男女2人連れは、店内の客を賑わせた。
少年の方は、少し長めの真っ黒な前髪に隠れた鋭い瞳を持ち、人形の様に精緻なその指で、綺麗なティーカップを上品に持ち、やはり整った顔でまた上品に紅茶を飲んでいる。
少女の方は、長く艶のある美しい黒髪を持ち、瞳の色は澄んだ灰青。細い指を忙しなく動かしている。薄桃色の唇と頬。とてもかわいらしい顔立ちだ。
「・・・・・・あの、真紅さん」
「ああ、ケーキなら奢るよ。それともチーズケーキが良かった?」
真紅と呼ばれた、不良校と名高い征鳥高校の制服の学ランを着た少年は、目の前の少女に優しく笑った。少女の背後で少年を凝視していた女たちがばたばたと倒れる。
灰色の薄手の上着に袖を通し、白いワンピース型のスカートの下に細身のジーンズを穿いた少女は、おろおろと少年を上目で見る。少年の背後にいた、少女に熱い視線を送る男たちが倒れて痙攣している。
「えっと、そうじゃなくて・・・」
「千鳥、その格好、とてもかわいいね」
言われて、千鳥と呼ばれた少女は頬を染める。男たちの痙攣が止まった。動かなくなった。
「何でうちの前に来たんだい? 孝鳥の様子だと、君の独断の様だけど」
千鳥は俯いた。真紅はそれを肯定と取る。
「あの2人は大丈夫だよ。寧ろ、放っておいた方が良い」
「・・・本当、ですか?」
「心配要らないよ。じゃ、僕たちも行こうか」
真紅は、美味しそうにチョコレートケーキの最後の一口を食べた。
 
「『愛の島流し』・・・?」
千鳥は眉を顰めて呟いた。真紅が、窓口で買ってきたチケットを千鳥に渡す。
「今日最後の上映だって」
手を差し伸べられ、とりあえず自分の手を載せる千鳥。そっと握られ、鼓動が早くなった。
上映場に入ると、さすがに館内最終上映だからか、人気も少ない。カップルが多い様な気がして、千鳥は顔を背けた。
自分たちも、そういう風に見られているのだろうか。
そう考えると、あまり嬉しくなかった。
空いている座席に並んで腰を下ろした瞬間、上映が始まった。
(う、わ・・・)
内容が始まって早10分。千鳥は苦々しい顔をした。
ドロドロの恋愛映画。今まで見た映画と言えば話題のアクション映画だの有名なスタジオのアニメ映画だの、『恋愛』ものとは全く正反対の生活を送ってきた千鳥だ。現に、そういうものが苦手なのだと、今回思い知った。その上、
(まま、待って待って待って待って!)
千鳥は目を大きく見開いた。危険。千鳥の本能が大鐘を叩いて知らせている。
今、千鳥の正面に据えられた大型スクリーンは、1組の男女の姿が映し出されている。
俗に言う、キメラスメタナシーン、で。
そんなものを直視した事の無い千鳥は、手を強く握り締めて、あまり前を見ない様に目を必死に細める。しかし、その瞬間だった。
「・・・ひっ!?」
真紅がゆっくり、千鳥の席の方へ身を乗り出してきたのである。焦る千鳥。真紅は瞳を細めて笑う。意外と睫毛が長く、綺麗な顔立ちをしている事に、千鳥は今気がついた。
「・・・・・・千鳥・・・」
耳元で真紅が囁く。反射的に、千鳥は身を硬くした。するり、と真紅の細く長い冷たい指が、千鳥の首筋を撫でる。千鳥はまた、ひっ、と呻いた。
「千鳥、君は知らないかもしれないけどね」
真紅は千鳥の細いのに柔らかい顎を持ち上げる。漆黒の瞳から、目が離せない。
「僕は、ずっと昔から、君の事が好きだったんだよ」
男は皆狼だから、そんなに警戒心を持っていないと食べられるよ?
そう言って、真紅はそっと、千鳥の唇と自分のそれを合わせた。
「・・・・・・!!」
千鳥は渾身の力で、真紅の頬を叩いた。ぱぁん、という甲高い音に、前方で映画を見ていた観客の視線がこちらに突き刺さる。しかしそんな事は気にも留めず、千鳥は立ち上がった。真紅の膝に、ぼろ、と1粒滴が零れる。
「真紅さんが、こんなひとだなんて、しりませ、んでした」
しゃくり上げながらそう言うと、千鳥は出口へと消えて行った。
「・・・だから、男は狼なんだってば」
真紅は、整った形をした薄い唇を、そっと舐めた。
 
「真さんの所に帰んなきゃ」
映画館の外に出た後、まだ濡れている頬を上着の袖で乱暴に拭い、千鳥は言い聞かせる様にそう言った。
「そうだよっ、もし真さんが傷まみれで・・・ぐったりしてたら、あたし・・・!」
力強く頷き、走り出す千鳥の足。
「まこと、さん!」
千鳥は、もうその言葉しか口に出来なかった。
 
ちなみに、千鳥が息を切らして飛び込んだ征鳥高校では、真と保が何故か巨大なショートホールケーキを山分けしようとして、其々の取り分で争っていた。
 
* なんか真紅メインみたいだけど、見てろよ! 俺の真さん好きを見せてやる!
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