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オリジナル長編(?)小説を展開しています。
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「真さん・・・? どうしたんですか、真さん?」
千鳥は真に背をつけ、後ろから襲い繰る敵を倒していく。よって、前が見えない。
先程まで全力疾走していた真は急停止したのだ。
千鳥は一気に残りの敵を倒すと、踵に力を入れて、勢い良く振り返った。

5 大決戦! カラスカラス
 
「・・・あな、た、は・・・」
千鳥の手に握られていたシャーペンが、こつり、と無機質な音を立てて床に落ちた。
「やあ、久しぶり。あれから何か変な事は無かったかい?」
千鳥を見つめ、優しく微笑む少年。少し低めの声。きちんと着込んだ黒い学ラン。
「烏羽、真紅・・・・・・さん?」
真紅は、より一層笑みを深めた。
 
こんな事になったのは、小1時間前である。
以前、謎の男に誘拐された自分を救ってくれた少年、烏羽真紅が、この空猫町の隣町白秋町にある不良校で有名な私立征鳥高校の生徒だと突き止め、お礼参りに行こうとした空猫町立空猫高校生徒会副会長の千鳥。しかし、空猫校生徒会長の真が、烏羽真紅と言う名を聞き、何故か顔色を変えた。生徒会の裏仕事、不良制裁をすると言い、千鳥と共に戦闘的訪問をした訳だ。そして、今に、至る。
今目の前にいるのは、千鳥が探していた、烏羽真紅本人。
しかし、真紅の様子がおかしかった。
「烏羽さん・・・何を、しているんですか?」
「ああ、真紅で良いよ、千鳥」
真紅は柔らかく微笑んだまま、真の喉に木刀を突きつけて、くつくつと喉の奥で笑った。
「こんにちは、孝鳥の真さん? 僕たちの巣へようこそ」
「くっそ・・・!」
舌打ちし、竹刀を握る真。とは言え、既に汗だくだ。真紅の放つ殺気は、今まで真が退治してきた者の中でも相当高い部類だろう。真の表情を見て、真紅が口を開く。
「止めておいた方が良いよ、孝鳥。君が僕を攻撃しようとした瞬間に、僕は君の喉をこの木刀で射抜く」
「真紅、さん・・・!」
千鳥が叫ぶ。すると真紅は千鳥の方を見て卑屈な笑みから一変、優しく笑った。しかし真の方への注意も忘れてはいない。
「千鳥、君は危ない。僕の後ろに隠れていると良いよ」
「・・・何を、するつもりですか・・・?」
「ああ、今からかい?」
くつくつとまた真紅は笑った。
「孝鳥の真、君に決闘を申し込むよ。烏の名と千鳥は僕が貰う」
後半は真にしか聞き取れない小さな声だった。真は目を見開く。
「何言って・・・!」
「今更知らないなんて言わせないよ。・・・惚れているんだろう? 千鳥に」
「なっ・・・!」
真紅は綺麗に笑う。
「何でそんな事知っている、とでも言いたげな顔だね。さっきから、ずっと千鳥を僕に見せない様に背中に匿っていたじゃないか。因みに君、顔真っ赤だよ」
慌てて手を頬にやると、信じられないくらい熱かった。
「でもね、千鳥の事好きなのは君だけじゃないんだ」
真紅は不適に笑ったかと思うと、その腕の中に千鳥を収めていた。
「しっ、真紅さん!?」
驚く千鳥を更に力を込めて抱き締めて、真を見る真紅。
「決闘、君なら受けるよね?」
「・・・上等だ」
真は竹刀を鋭く構えた。真は普段一撃必殺の技を多用するので、避けられると隙が多いというのが短所だ。しかし、この構えは独自に真が編み出したもので、細かく打ち合う合間に激しい突きを繰り出すという式。攻撃力はあまり無いが、外してもすぐに体勢が立て直せる。長期戦をする予定らしい。
真紅はにこりと笑うと、千鳥を優しく後ろに隠した。そして木刀を構える。
「木刀に竹刀じゃ不利だね。貸してあげようか? 木刀」
「いるか、そんなもん」
真はぶっきらぼうに答えた。
「随分な自信だね。でも、そういう奴が絶望の表情を浮かべるのを見るのは凄く楽しい」
「趣味悪いぜ・・・」
「君に言われたかないね」
その言葉を合図に、ふたつの影は駆け出した。片方が突くと片方は素早くそれを防ぎ、片方が刀を振り上げると片方が相手の下に潜り込んで撃った。両者の実力は互角の様だ。
「真さん!」
千鳥は叫んだ。見ただけでも、真紅が先程言った通り、竹刀は圧倒的に不利だ。木刀の頑強な強度と破壊力に押され、真の息が上がってきた。
「ふうん・・・聞きしに勝る強さだね、孝鳥」
くるくると木刀を空中で回転させ、再び握りを掴む真紅。真と違い、その表情は余裕だ。
「てめーもな、静かなる鬼」
真が不適に笑いながらそう言うと、千鳥が首を傾げる。
「静かなる、鬼・・・?」
真紅は驚いた顔をして見せた。
「へえ。知っていてくれたんだ。光栄だね」
「知らねえ奴の方が少ねえよ、この町じゃあ。――最強の不良・・・武器の木刀で女子供容赦無く攻撃する。こっちでも随分有名だぞ?」
「そうか。僕は今回の事で名前を広めるつもりだったんだけど。・・・孝鳥の名前で」
「孝鳥は、真さんの異名です!」
「知っているよ。だから今、奪うんじゃないか。孝鳥の名前と、孝鳥の大切なものを」
真紅は横から激しい突きを真の腹に放った。反動で倒れこむ真に、真紅は刀を振り上げる。
「さようなら、“孝鳥”」
ここまでか、と真は瞳を閉じた。
 
「ここは神聖な決闘の場だよ。侵してはならない」
黒い、長い前髪の少年は、優しい口調で静かに告げる。出来るだけ優しく笑い返して、少女は手を解いた。ぱら、と、手から小さな棒状の物が落ちるが、地面と挨拶する前に繋がれた紐で動きが止まる。手を一回転させて紐を手繰り寄せてから、千鳥は笑顔を解いた。
「武士道などは関係ありません。これは私の我儘です。真さんを、殺させないと思ったからです。真さんを傷つけるものならば、あたしは鬼にもなりましょう」
「ふうん、素晴らしい忠誠心だね」
真紅はくつくつと、例の喉の奥で出す声で笑った。
「まあ、いいや。今回はこの辺にしておくよ。それじゃあまたね、千鳥」
ふわりと音も無く、いつかの様に真紅は消えていった。残された千鳥は呆然と立っている。
「千鳥、」
言いかける真を制し、千鳥は凛とした目で前を見る。
「あたしが迂闊な行動をとった事は謝罪いたします。この高校に乗り込む所から、貴方の武士道を曲げてしまった所まで。でも、後悔はしていません。・・・真さん、もう少し、生徒会活動の範囲を広げてみましょう。隣町も視野に入れて」
真は何か言いたげだったが、躊躇い、手を下ろした。千鳥に触れようとしてまた上げた手も、下ろした。
(いつか、また)
会う事になりそうだと、頭の中で響く声に苦笑して、真は立ち上がる。
駆け寄る千鳥の頭を、気がつけば撫でていた。
 
* 出会った時から好きでした的な? それともずっと前から君の事を見ていたんだよ的な? 後者だったら真紅は変質者で訴えられると思います。
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