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オリジナル長編(?)小説を展開しています。
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「もう終盤だね」
「おう。今んとこ青組ブルーシャークスがぶっちぎり1着だな」
「そーだね。あ、次! 真さんの出る種目!」
「なになに?」

19 「空猫高校体育祭目玉種目り物競争!」
 
「面白そうだね。僕も参加していい?」
真は肩を竦めて構わないという意を示した。真紅は満足気に頷き、真の隣に並ぶ。
「ここらで君をぎゃふんと言わせておかないとね。完膚なきまでに叩きのめしてあげるよ」
「・・・・・・こっちの台詞だ」
すました微笑みの真紅を一瞥して、真はトラックの中に入っていった。
「ねえ孝鳥、どんなものが借りに出されるの?」
「俺も知らねえ。係の奴らが秘密裏にやってるらしい」
カルガモの子供よろしく真紅も後に続く。
「へー。よく噂で聞く“こうちょうせんせいのづら”ってやつも?」
「・・・・・・お前、どこでそんなこと聞いたんだ・・・?」
さらりと無視して、真紅はその漆黒の瞳で目の前にずらりと並ぶカードを見つめた。
それを見て、焦る者が1名。
「! なんでアイツがコレに参加すんだよ!!」
竜也である。彼は恨めしそうに一列になったカードと、それを見つめる真紅を睨んだ。
「もうすぐに始まっちまう。時間がねえ、もうこりゃ運に頼るしか・・・」
「え? どうしたの、りゅー」
「ああ、なんでもねー。こっちの事情」
慌てて手を振り、竜也は黙りこくった。この作戦、失敗すれば全てが水の泡となる。
「頼みますよ、会長」
なだらかに涼しい風が吹き、選手たちの熱を消していく。
 
ピストルが鳴り、選手たちは一斉に駆け出した。この借り物競争のルールは特殊で、3往復しなければならなかった。
まず、真が拾ったカード。その隣を真紅が拾い上げる。
「・・・ジャガイモとニンジン・・・・・・ってんだコレ!? おつかいィィ!?」
「残念だったね、孝鳥。僕の勝ちだ」
誇らしげに真紅が掲げたのは、『校長先生のヅラ』と書かれたカード。
「それもヤバイっつーの!! つーか念願叶って良かったなオイ!」
ツッコミながら、真は辺りを見回す。と、校庭の真ん中に、いかにも怪しげな葉が生えているのが分かった。
「・・・掘れってか!?」
その間にも真紅は観戦していた校長先生に華麗な飛び蹴りを「シャイニングウィザード!」と叫びながら披露し、ヅラを奪取。焦った真は葉を掴むと、真上に引き上げた。
「ぬんぐぐぐぐおおおおああああああ!!」
勢い余って空を飛ぶジャガイモとニンジンをどうにかキャッチし、真も真紅の隣に並ぶ。
2往復目。
「ディ○ニーシーのお土産品? ああ良かった、丁度持ってた」
真紅はいきなり学ラン(言い忘れていたが、この暑い日に真紅は学ランをきっちり着込んでいる)の胸ポケットから、ミ○キーが微笑んで手を振っているイラストが描かれたピンク色の鏡を取り出した。その下にはきちんと「SEA」と書かれている。
「何故ピンクの鏡を!?」
真は自分の作業もこなしつつツッコミに余念が無い。真が引いたカードの内容はこうだ。
「ディ○ニーランド買収・・・ってコレもはや借り物じゃねえェェェェェェェ!!!
運動場に真の叫び声が響き、竜也は唇を噛んだ。真が今持っているのは、企画当初から竜也が入れていた、「絶対にクリアできないハズレカード」である。どうにもできず右往左往している様を皆で笑おうという悪趣味極まりないものだったが、このままではまずい。カードは人数分だけしかないのだ。ここで真が立ち往生してしまったら、真紅が“あのカード”を拾ってしまう事があるかもしれない。
その時、千鳥が軽いボードを運動場へ投げつけた。驚いて千鳥を見上げる竜也。千鳥は手をメガホンの形にして叫んだ。
「こちらの手違いでそのボードを用意しておくのを忘れましたー!」
ボードには、『ディ○ニーランド』と書かれていた。真はそれを拾い、走り出した。
「誰があれを?」
「ん。スキンせんせ」
徹は竜也と同じく、借り物競争の担任だった事を思い出す。彼がこの制度に反対していた事を思い出し、竜也はほとほと頭が下がる思いだった。
(後は、会長次第)
ぶっちぎりのトップで、どのカードにしようか迷っている真紅の背後から、真が全力で走ってくる。
 
「「これだ!!」」
 
2人は同時にカードを拾い上げた。
「・・・赤い、ハンドバッグ?」
真紅が片眉上げる隣で、真は硬直した。
「何だ、コレ・・・・・・・・・・・・」
『好きな人を連れてくる』
汗が一度に噴き出してくる。好きな人。好きな、人。それはつまりこの場で、
千鳥が好きだ、と言わなければならない、ということ。
「この時代に赤いハンドバッグは珍しいね。どこにいるんだろう」
真紅が辺りを見回す隣を、一陣の風が横切った。素早く、切っ先は鋭く、不安定で鋭利な刃物の様に。真紅は振り返り、少しだけ首をかしげた。
「どうしたんだろう、孝鳥」
 
真は全速力で走った。そうすれば思考も何もかも振り払えると思った。目指す先は、テントの下。テーブルに座る金髪跳ねっ毛の少年の隣。立っている坊主頭の男の正面。
 
長く美しい黒髪の、灰青の瞳を持つ可憐な少女。
 
竜也はこちらに迫りくる真の姿を見て、心の中で胸を撫で下ろした。どうにか“あのカード”は真が取ってくれたらしい。竜也の隣で、千鳥はしぱしぱと大きな瞳を瞬かせた。ここに借り物があるという話は聞いていない。何を渡したらいいのかとあたふた慌てる千鳥と徹の様子を気にせず、真は千鳥の手を力強く握った。
「来い!」
「ふぇえ?」
事態が飲み込めず、目を白黒させる千鳥。それに少しだけ微笑んで見せて、千鳥を立たせると、真は走り出した。握った手の熱さと、握力の強さに、千鳥は戸惑いながらも笑みを零す。ゴールの門を潜ると、真は観念した様にカードを差し出した。
 
「千鳥」
 
係はカードの中身を見て、千鳥の顔を見て、静かに頷いた。観客席の婦人から赤いハンドバッグをもぎ取ってきた真紅が後ろから駆け寄る。それを感じながら、真は冷や汗や脂汗で全身ぐっしょりだった。
 
「俺はっ、お前の事が好きだ!」
 
精一杯の告白。不器用だけれど真っ直ぐな、一変の曇りもない想い。
真紅は黙ったままだった。少しだけ弱ったように微笑み、見守っていた。
 
* どうしよう様々な方面で
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